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【コラムQ&A】通信速度を把握せよ!

2022/03/08

 「光にすれば速くなりますよ」という営業の人間がよく使用する言葉。
実際のところ現場で営業している人でも漠然とした感覚で言っていることが多く、このインターネットの速度について、具体的に分かっていない人が多いのではないでしょうか。
営業の人間でも分かっていないのに、その説明を受けるお客様はより分からないというのが実情で、今回はこの速度について説明したいと思います。

「パソコンが遅い」という言葉



 この前、ケーブルテレビ業界人が使用する掲示板に以下のような質問が書き込まれていました。

「弊社で光サービスを開始しましたが、お客様から速くないと言われることが多いです。
同じような事例が他の局さんでもありましたか?」


 この書き込みに対してケーブルテレビの通信インフラ系を担当している人達が、インターネットの速度が出ない不具合に関していろいろな観点からアレコレ論じていました。
私は基本的に現場の営業のため、掲示板内で議論されていたBtoB向けの通信インフラ分野に関しては疎く、書かれていたことがちんぷんかんぷんでした。
ただし現場で営業をしていると、この手の話をお客様からされることがある、というか多い。
現場営業の観点から言うと、この話題を振るお客様の傾向として基本的にIT分野に弱く、ダウンロード・アップロードの速さが何に役立つか理解していないことが圧倒的に多い点です。
営業の人間がよく言う「光にすれば速くなる」というこの言葉にはいろいろなものが省略されており、正しくは以下のようになります。

「インターネット通信であるダウンロード・アップロードの速度に依存する作業や、機器において
現状では通信速度が足りず遅く感じるため、これを解消するのにより高速回線となる光回線にすれば、速度に依存する作業に関しては速くなる」

 ここでの注目ポイントは「速度に依存する作業や機器」。
これはどういうことかというと、例えば、メインで使用しているスマホが契約キャリアから通信の速度制限がされ、YouTubeの動画視聴やブラウジング(ネットでの検索)するのに必要な通信速度が足りずに、クルクルと読み込み時間が長くなってしまいます。
これを解消するにはキャリアにお金を払って速度制限を解除するか、自宅や公共WiFiなどの一定の速度が出ると思われる別回線に繋ぐ必要があります。
ここでの注意事項は、速度制限がかかっている状態だとしても、インターネットの通信を必要としないアプリに関しては問題なく使用できる点。
「なーに当たり前のことを言ってんだ!?普通のこと言いすぎて逆に難解」というITボーイたちは思ったかもしれませんが、世の中の多くの人たちがこの事実を分かっていないんですね。

「光にしても遅い」と思う人の大半は、自分がパソコンやスマホで作業する際に、それが通信速度を必要なのか否かを理解していないため、通信速度以外にも問題があることを理解していないのです。
例をあげると、「光にしても、パソコンが遅かった」という問題。
この「パソコンが遅かった」という何となく分かるようで分からない漠然としたこの表現はなかなか曲者で、現場の営業時にこの言葉を聴いたら「パソコンを使って何の作業をする際に遅く感じるのか」というお客様から聞き出す必要があります。
そこで返ってくる大方の返事は「光にしてもパソコンの起動が遅く、ワードとかもパソコン新品購入時のようにサクサク動かない」ということです。
一般的なパソコンの起動にはインターネット通信が必要ないため、光10ギガ回線にパソコンを繋ごうが、江戸時代にタイムスリップしてパソコンを付けても起動しようが、起動速度は基本的に変わりません。
パソコンが光回線の恩恵を活かせるのは通信速度が必要な作業の場合だけで、パソコンの起動やマイクロソフトのワードやエクセルの使用には通信が必要ありません。
パソコンの起動を速くさせ、サクサク動かすことは、CPU、メモリやSSD換装などパソコンに使用される部品の性能に依存するため、これらの改善が必要になります。

IT分野に疎い人だとここらへんの見極めがなかなか難しく、その結果「光にしてもパソコンが遅かった」ということを言いがちになってしまいます。

本当にあった"速度が遅い"話

 冒頭にあった他社ケーブルテレビさんであった事例では、書き込んだ人がお客様の自宅で通信速度を測定したうえで回線側が明らかに遅いから問題提起したのか、それとも現場での調査はしていないのか、どっちか分かりませんが、お客様が言う「速度が遅い」という言葉に関して少なくとも現場の人間ならば

 ①上流の通信インフラ回線 ⇔ ② ケーブルテレビ ⇔ ③ お客様自宅

これらのうち、どこに問題があるのか原因切り分けをする必要があります。
何が遅いのかお客様から具体的に聞き出すのは前提で、「どうやらお客様の回線が遅いということを言いたいらしい」ということならばインターネットの通信速度を測定するサイトで計測します。
これで明らかに速度が出ているならば、上記③の通信を受信しているパソコン、スマホの性能が悪いと判断し、確かにモデムやONUで回線速度が明らかに遅いということならば上記①②と判断します。

でも実に恐ろしいのが①②が原因でお客様宅での速度が出ていない場合です。
速度が遅く感じることの大半が機器の性能不足によるところが多いのですが、少数派ながらお客様の中にはIT猛者がおり、その手の人達が言う「御社の回線、速度が遅い」という主張は基本的に上記①②が原因のため、それに立ち向かう現場営業は「ベストエフォートですから…」と悲哀を帯びた返事をせざるを得ません。
この「ベストエフォート」とは、平たく言うと、「理論値最大の通信速度と実際の通信速度はかなり乖離していることがあるけど、通信事業者的には頑張って速度が出るように最善の努力はするけど、速度を保証するものではないよ!」という規約上の謳い文句のことで、この「最善の努力」を英語にすると「best effort」となり、一般的な通信事業社はこれを規約に入れています。
通信速度は時間帯、地区や建物の構造など様々な条件によって上下するため、実際の速度、いわゆる実行速度が遅いということが正直あります。
このような場合に現場営業は「ベストエフォートですから…」という白旗宣言をすることになり、お客様と気まずい雰囲気になったり、場合によってはクレームになったりします。

近年でこれが生じたのが、2020年春ごろの新型コロナウイルス流行による自粛期間の時です。
当時は新型コロナという未知な存在に対して警戒したためか、一気にリモートワークが加速しました。
巣ごもりという言葉で表現されていたように、平日の真昼間から一斉に各家庭で通信し過ぎた結果、特定の地域では通信回線が逼迫して自宅で数Mbps程度しか出なかったことがありました。
通信事業社は通信回線の負担、つまり通信のトラフィックと常日頃格闘しているのです。

実行速度が速くても体感が速くなるというわけではない

 2000年半ばころにはNTTさんが上り下り最大約100Mbpsの光サービスを提供し、弊社入間ケーブルテレビグループで光サービスが開始したのが2013年ごろで、当時では珍しかった光1Gbps回線も販売を開始しました。
近年では事業者によっては下りが2Gbps、最速10Gbpsというたように通信回線がより高速化してきています。
仮にこの実行速度が速くて、性能が良いスマホやPCがあったとしても必ずしもそのはや~い実行速度を体感できるわけではありません。
程度の差はあれ、一定の速度から体感が変わらなくなるからです。
 ものすごく簡略化して説明すると、例えば、動画サイトYに10人視聴者がいるとします。

 動画サイトY⇔①Aさん、②Bさん、③Cさん・・・⑩Kさん

 視聴者が動画を見るということは、動画サイトYにサーバーにある動画ファイルを視聴者が通信することになります。
ここで数値を当てはめると、サーバー的に動画ファイルにアクセスできる通信速度の上限が1000Mbpsだとし、Aさんが1000Mbps通信できる環境だと、サーバーの上限1000Mbpsに対し、Aさんのダウンロード1000Mbpsが占有することで他の人達が通信のキャパシティをオーバーすることになり、Aさん以外は動画ファイルにアクセスすることができず動画を視聴できません。
いわゆるこの状態が「サーバー落ち」という状態です。
ただし動画サイトYは多くの人たちにまんべんなく動画を視聴できるようにしたいため、実際のところは一人当たりの通信できる速度を制限することで多くの人が視聴できるようにします。

 Ex1)通信速度に規制をかけない場合
 動画サイトY:最大1000Mbps対応⇔①Aさん:1000Mbps
      ※Aさんが回線を占有しているため、その他9人はサーバーにアクセス不可

 Ex2)通信速度に規制をかける場合
 動画サイトY:最大1000Mbps⇔①A:100Mbps、②B:100Mbps・・・⑩K:100Mbps
→Y:1000Mbps=10人*100Mbps になり10人がサーバーにアクセスできるため
10人みんな動画を視聴できる。

 というように通信に関して様々な制限がかかっていることが多いです。
YouTubeの場合、私の経験上最低1Mbpsあれば動画の読み込みは軽く待たされますが、その後その回線速度に合わして動画が低画質化されるため、動画を再生さえすれば、1Mbpsで意外にも停止することなく視聴できます。
逆に100Mbpsと1000Mbpsの回線速度でYouTubeを視聴した際に、体感としては変わりません。
このようにして、様々なウェブサイトはサービスをギリギリ保っているのが現状です。

YouTubeはグーグルに買収される前は赤字体質で、いろいろなテコ入れがあってようやく黒字になった経緯があります。
YouTubeがリリースされた2006年ごろには動画を視聴していてもCMはありませんでしたよね。
同時期に始まったニコニコ動画は、夜の混雑時には無料会員は低画質、有料会員は高画質というように差別化を図っていました。
この手のサービスでは、基本的に無料会員は不便を我慢して使用するというのが当たり前だったのですが、各企業はとにかく通信のトラフィックを下げることを画策しています。
YouTubeやネットフリックスでは、視聴したい動画を一度ダウンロードすることで基本的に2回目以降は通信しなくても、オフライン状態で動画視聴できるようにし、通信を1度だけ済むようにしています。
動画サイトより遥かに高速のネット回線を用いるオンラインゲームにおいても、同じように如何に省エネ通信で済むようにプログラムが日々開発されています。

上質なネット回線の条件は上り下りの速度が速いだけではダメ

 契約回線の速度測定をすると、ダウンロード・アップロードの速度に一喜一憂しがちですが、この数値が良くても遅延が発生することがあります。
速度測定に関して、もう一つ重要な指標が「Ping」です。
上記の画像を見ていただくと測定した速度の横にひっそり表示されていますが、このPingとは、ネットが接続している機器と通信先のサーバー間の応答速度になります。
簡単に言うと2者間にどのぐらいに遅延があるのかを数値化したものになります。
数値が低ければ低いほど遅延が少ないことになります。

弊社インターネット回線の場合、設置光ONUからパソコンをLANケーブルで直結させた場合、Ping数値が一桁に収まることが多いです。
スマホなどの大手キャリア電波の場合、一桁の数値を出すことはなかなく難しく、環境にかなり左右されるため、20~50ぐらいの数値になることが多いです。
またいわゆる格安スマホなどの回線の場合、トラフィックの負担がかかる時間帯で測定すると100以上の数値がでることがあります。
ダウンロード速度が10Mbpsの場合でも、Pingが1と100ではネットの反応速度が違い、100の方は遅く感じる可能性があります。
と言ってもPingの数値の良し悪しが具体的にどのような影響があるかは多くの人がピンとこないと思いますので、Pingが重要な事例を説明します。

基本的にYouTubeで動画を観る場合は、接続機器からYOUTUBEから動画を一方的にダウンロードしているだけになるため、このPingの数値はあまり気にする必要がありません。
重要なのが2者間もしくは3者間以上で通信のやりとりをする場合です。
分かりやすいのが、近年流行りのZoomミーティングなどのネット動画会議アプリです。

 ユーザーA ⇔ ネット動画会議アプリZ ⇔ ユーザーB

一般的に上記のユーザーAとBがお互いに会話をする場合、相互の通信的に一度アプリZを経由して、先方に情報を伝えることになります。
その際にPingの数値が悪いと、AとBの2者間で遅延が発生するため、結果的に自分の発言が相手の発言を遮ったり、相手の映像と音声がズレたり、チグハグしていきます。
Zoomミーティングは動画なので高負担なネット回線が必要だと思いがちですが、実際のところプログラム的に軽めに設定されているため、回線速度は10Mbpsあればお釣りがくるほど回線速度的に問題はないですが、リアルタイムで常に反応し続けなければいけないため、実は重要なのはPingの数値だということになります。
Pingの数値が顕著に求められるのが、動きが激しいオンラインゲームです。
ゲームの場合、多くのゲーム内キャラクターが世話しなく動き続けるので、回線速度は速いのは前提でこのPingの数値が限りなく1に近い数値が求められたりします。
遅延が発生するのはNGのため、WiFi環境でオンラインゲームをするのを禁じたりするユーザー内での厳しい独自ルールがあったりします。
このPingの数値は通信事業者側の回線に左右されますが、利用するルーターやLANケーブル、パソコンなどにも左右されるため、無線から有線に変更したら数値が劇的に改善したということが多いです。
速度が明らかに出ているのに、なにかつっかかりを感じるときは、これらの機器類を確認してみるといいですね。

最後までコラムを見てくれた人だけに内緒の話!営業泣かせの契約

 多くの通信事業者が基本的に光1Gbpsの回線契約を販売しています。
弊社も最速1Gbpsを販売しています。
確かに1Gbpsは速いのですが、オンラインゲームや個人所有のサーバーが必要ない人にとってこの1Gbps契約は実はオーバースペック(過剰な性能)なため、実はなかなか有効活用するのは難しいのが現状です。

ここで質問です。

 「動画サイトで4K動画を視聴するのに最低何Mbps必要ですか?」

という問いに即答できますか?
答えは約20~25Mbpsになります。

4K動画でもたったこの数値のため、実は1Gbpsという契約は実は必要ないことが分かります。
4Kが徐々に普及しているとは言え、多くの人が4Kより小さいHDなどで動画を視聴しているのが現状のため、その環境だと5Mbps出ていれば問題なく視聴できます。
ここで重要なのが契約している回線が平均的にどのぐらい速度が出て、使用する速度がどれだけ必要なのか把握することです。弊社ケーブルテレビグループの場合、1Gbps以外にも、300Mbpsや50Mbpsのプランも用意しています。50Mbpsの回線なんて1Gbpsの20分の1で大丈夫?と思うかもしれませんが、自分で使用する速度を把握しておけば、50Mbpsでも運用できます。戸建の木造住宅、家族4人でサブスク動画を同時にバンバン観るというなら回線的に弱いですが、無線ルーターをきっちり構築しておけば、単身一人暮らしや同居人と同時接続はしないということなら動画視聴するぐらいなら問題ありません。
IT猛者を相手に営業をすると上記の内容と同じようなことを言われ、1Gbps契約を狙ったはずが、50Mbps契約となり、営業がしょんぼりすることになります。

  光ネット1Gbps・・・4840円(税込)
  光ネット50Mbps・・・3410円(税込)

 上記の価格差は1430円。
この差を高いとみるか、低いとみるか、人によりますが、少しでも安くしたいというなら50Mbpsで一度契約をし、様子見をするのは賢い選択ではないでしょうか。
仮に環境的に遅いと感じても電話一本で上位プランに変更することができます。
分からないから1Gbps契約というのもいいですが、自分の環境を調べて適切な選択をしてみるのはいかかでしょうか。